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Doug McAdam 1988 Freedom Summer.第2章

Doug McAdam 1988 Freedom Summer.Oxford University Press.

第2章 活動家たちの伝記的ルーツ

 

簡単な要約です。

なぜか翻訳がない。

 

アメリカ南部の1964年の夏の話です。

舞台はミシシッピ州。猛烈な人種差別が行われていました。

 

白人たちは黒人(本書でそう呼んでいるので)たちを、多分人間以下だと思っていたのでしょう。有名は歌では、「奇妙な果実」という歌があります。20世紀の前半だと、黒人は白人にちょっかいをだしたりすると、リンチされて木に首吊りにされていたらしい。

 

南部ミシシッピ州でも、1955年から始まった公民権運動の一環で、黒人解放運動が起こります。当時の黒人たちは選挙権がありません。選挙登録していません。しようと思ってもいなかった。そんなことをしたらどんな扱いをされるのかわかりません。

 

しかし、平等の原理からいってそれはおかしい!ミシシッピの黒人に選挙権を与えようという運動がおきます。

そして1964年にフリーダムサマーキャンペーンが始まります。(実際は模擬投票になった)

 

でもそんなことを黒人がやっても、隔離主義者たちにリンチされます。

彼らがいくら殴られても、たいした犯罪にはならないらしいし、ニュースにもならない。

 

そこで、運動の執行部は、北部の大学生をキャンペーンに連れてこようとします。

イエールとかスタンフォードとかの裕福なエリート大学生が、黒人のために働いているとなれば、ニュースになります。まして彼らが暴行をうければ全米で話題になります。

 

そして実際に、人種差別に疑問をもった北部の裕福なエリート白人大学生がボランティアとして南部にやってきます。人種隔離主義者の暴力を覚悟しながら。

 

この危険なキャンペーンにだれが参加したのか?これがMcAdamの問いです。

 

申請者に共通する点を探すと、何かしらの団体に入っている人がほとんどでした。

教育団体に入っている人は、南部の黒人の子どもの教育に関わりたくて応募します。

宗教団体に入っている人は、福音の実践のために応募します。

政治団体に入っている人は、愛国心の実現のために応募します。

共産主義団体に入っている人は、左派的な動機などから応募します。

 

さらにMcAdamによると、これらの団体に入っている人は、親もまた団体に入り、ミシシッピにいくことを後押ししてくれます。親、つまり生まれ育った家庭環境が大事ということです。

  応募した人たちは、家庭内である程度、人種平等などの教育をされて、社会活動に従事する団体に入っている人でした。

 

だけど、応募したけど行かなかった人がいます。

そこで、McAdamは応募者の中で行った人と行かなかった人を比較します。 

 

効いた変数は、まずは年齢と性別。これには理由があります。

21歳以下は親の許可が要ります。そのため、参加者は大学院生とかちょっと年配の大学生になりがちでした。そして当時白人女性が黒人男性と接触することはちょっとしたタブーだったので実際には女性は行かないことがあったようです。

 

 そして、McAdamの面白い指摘は、公民権運動に関わっている友人・団体と結びつきの強い人は、プロジェクトに参加しやすいということです。 

 どこに所属するのか、どんなつながりを持っているのか、というのが、フリーダムサマーへの参加を決めた要因だったのでした。

 

ロジステック回帰分析と圧倒的なインタビューをしているので、面白いし、説得力があります。ただ、応募者と非応募者の比較をしていない、所属団体による参加者・非参加違いがそんなに強いものなのか、細かい点では疑問もあります。